◼︎書誌情報
山本裕樹, 鈴木雅大, 落合桂一, 松尾豊: 産業間の取引構造を用いた深層学習モデルによる生産指数の予測, 情報処理学会論文誌 (2022)
◼︎概要
多くの投資家にとって金融機関や中央銀行,政府から出される金融・経済レポートを読むのは骨の折れる作業である.本稿では自然言語処理を用いて,金融経済に関する文書から自動的に景況感を読み取り指数化(景気センチメント)する手法を提案する.投資家はこの指数によって,文書の全体的な景況感を即座に読み取ることが可能となる.本手法の特徴は,景気センチメントを推定するモデルに深層ニューラルネットワークの一手法であるLSTMを用いた点と,これを学習するために必要な教師データとして景気ウォッチャー調査データを用いた点にある.手法の有効性を示すために,政府の発行する月例経済報告と日本銀行が発行する金融経済月報をそれぞれ指数化して日経平均株価と比較したところ,既存の経済指標と比較して高い相関があることが確認された.本稿で提案した手法は既に実務でも応用が進み,企業や政府がSNSや地域経済レポートを指数化して公表される等の活用が為されている.