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  • 【東大松尾研】2025年の活動報告

    こんにちは、松尾研広報チームです。

    本郷キャンパスの銀杏並木も葉を落とし、すっかり冬景色に変わりました。
    2025年も残すところ僅かということで、今年の松尾研の活動をまとめて振り返ります。

    松尾・岩澤研究室とは

    東京大学 松尾・岩澤研究室では、「知能を創る」ことを目的に、人工知能、特に深層学習に関する研究を行っています。

    また、アカデミアの研究内容が、研究それ自体に閉じることなく、スタートアップやサービスという形で世の中に広がり、その経済活動の中で成長した人材や得られた知見や課題、そして未来のための資金が大学に還流され一層研究が進んでいく。このようなエコシステムを東大・本郷で実現したいと考え、松尾研では基礎研究、講義、共同研究、インキュベーションという4つの活動を進めています。

    基礎研究

    本研究室では研究員が約30名、配属学生が約50名所属しており、「知能を創る」というミッションのもと各々が研究テーマを設定しながら研究を推進しています。「世界モデル」「大規模言語モデル」「ロボティクス」の3領域を中心に、知能を実現するための理論研究からその応用領域への統合までを研究しています。

    2025年度は12月までに26本のトップ会議及びトップジャーナルに採択されています(ICMLに2件、NeurIPSに4件、ACLに2件、EMNLPに4件、ICCVに2件、TMLRに3件、など)。
    研究業績一覧はこちらをご覧ください。

    <研究テーマ例>(投稿中のものも含む、一部抜粋)

    • Reasoningに関する研究
      • グラフ構造を利用した分析:Topology of Reasoning: Understanding Large Reasoning Models through Reasoning Graph Properties, NeurIPS 2025
      • SFTとRLの違いの分析:RL Squeezes, SFT Expands: A Comparative Study of Reasoning LLMs
      • 考えながら動くモデル構造
    • 安全性に関する研究
      • テストタイムアンラーニング:Answer When Needed, Forget When Not: Language Models Pretend to Forget via In-Context Knowledge Unlearning, ACL 2025 (findings)
      • ロボット基盤モデルの安全性:A Comprehensive Survey on Physical Risk Control in the Era of Foundation Model-enabled Robotics, IJCAI Survey Track

    • ロボット基盤モデル
      • ロボット基盤モデルの開発(AIROAとの協業):https://weblab.t.u-tokyo.ac.jp/news/2025-07-18/
      • 高速化:Leave No Observation Behind: Real-time Correction for VLA Action Chunks

    • 拡散モデルに関する研究
      • 理論:The Geometry of Phase Transitions in Diffusion Models: Tubular Neighbourhoods and Singularities, TMLR
      • 動画生成モデルの推論時スケーリング:Inference-Time Text-to-Video Alignment with Diffusion Latent Beam Search, NeurIPS 2025

    • 医療応用に関する研究
      • ベンチマーク構築:MMLU-ProX: A Multilingual Benchmark for Advanced Large Language Model Evaluation, EMNLP2025
      • エージェントの活用:ReAgent: Reversible Multi-Agent Reasoning for Knowledge-Enhanced Multi-Hop QA, EMNLP2025

    研究室では毎月ポスター発表会の機会が設けられ、互いの研究成果の発表やディスカッションを積極的に実施しています。

    講義

    本研究室では、AIの基礎研究を通じて得られた知見に基づき、年間30講座以上の講座を開講しており、東大生のみならず、文理不問で中学生から大学院生まで幅広い学生が受講可能です

    2024年度は年間27,000人が受講、2025年度は年間で70,000人の受講生数を見込んでいます。これまでの累計講座受講者数は95,000人を突破し、日本全国の学生にAI教育の機会を提供してまいりました。(現在募集中の講義一覧はこちら

    本年度は新規講座としてAIと半導体講座」「Physical AI講座」「AIエンジニアリング講座を開講し、下記の通り多くの方々にご受講いただきました。

    <各講座受講生数>
    PhysicalAI講座:1,275名
    AIエンジニアリング講座:1,420名
    AIと半導体講座:2,100名


    こうした国内での教育実績を背景に、直近は講義のグローバル展開も進めております。

    本年度開催されたTICADには松尾教授も参加し、石破前総理より松尾研と連携しアフリカでAI人材を3万人育成する旨を発表され、大きく取り上げていただきました。


    ▼アフリカでAI人材3万人育成 政府と東大松尾研、製造業・農業DX支援
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA041X30U5A800C2000000/

    TICADが横浜で開幕 石破首相 AI分野で3万人育成方針を表明

    さらに9月には、これまで国内で展開してきたデータサイエンス講座「東京大学グローバル消費インテリジェンス寄付講座(GCI)」を英語化し、「GCI Global」として全世界に向けて開講しました。

    本講座の開講は大きな反響を呼び、アフリカやASEANを始めとする世界33ヶ国436大学から7,721名が受講を申し込み、9月17日にはベトナム・ハノイ工科大学にて初回講義を現地開催しました。

    松尾研の海外展開に関する取り組みについては こちら をご覧ください。

    共同研究

    本研究室とビジョンを共有する株式会社松尾研究所 では、アカデミアから生み出される研究成果・技術の「開発・実装」を行い、広く社会に普及させることを目指し、日本の産業競争力の向上に貢献しています。松尾教授は技術顧問として参画しています。


    松尾研究所では年間で25-30プロジェクトが常時進行しており、さまざまな産業・業種のAI活用のニーズに応える共同開発を推進しています。(松尾研究所の取り組みについてはこちら

    松尾研究所との共同研究・共同開発にご関心をお持ちの方は下記フォームまでお問い合わせください。

    インキュベーション(起業支援)

    松尾研のエコシステムからは、学生時代に起業するような若い起業家が多数輩出されています。2025年度は新たに、下記14社が松尾研発スタートアップ*として加わり、 松尾研発スタートアップは全40社となりました。

    *松尾研発スタートアップ:松尾研出身者が創業、または松尾研の支援を受けて創業された企業のうち、技術力・事業力の両面において高い成長可能性が認められ、かつ松尾研の理念に共感し、後進の育成に共に取り組む選抜されたスタートアップ企業群です。

    その他の活動

    ◆NHKスペシャル「岐路に立つ東京大学 〜日本発イノベーションへの挑戦〜」にて松尾研の活動が紹介

    本年1月に放送されたNHKスペシャルでは、松尾研の活動を紹介いただきました。特に、学歴や環境に縛られず、東大生のみならず高専生や「ヤンキー」(※)など、多様な才能に着目しイノベーション人材を発掘しようとする松尾研の活動は、大きな反響をいただきました。

    ※「ヤンキー」:経済的困窮や社会的孤立などで進路選択が難しい若者を広義の意味で指し示す言葉

    https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/XLV1NMYYWP

    ◆石破総理と関係閣僚が、松尾・岩澤研究室主催の生成AI集中講座に参加

    2025年4月26日(土)東京大学本郷キャンパスにて生成AI集中講座を開催し、石破総理と関係閣僚の皆様がご受講されました。

    <参加メンバー> ※役職は当時のもの
    ・石破内閣総理大臣
    ・城内内閣府特命担当大臣(科学技術政策)
    ・平デジタル大臣
    ・赤澤内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
    ・あべ文部科学大臣
    ・中谷防衛大臣

    https://www.kantei.go.jp/jp/103/statement/2025/0426kaiken.html

    株式会社Third Intelligence設立、松尾教授が創業者として参画

    創業者およびChief Scientistとして松尾教授が関わる株式会社Third Intelligenceが設立され、本年11月には初のラウンドで80億円の資金調達を実施しました。

    https://third-intelligence.com/news/001
    https://third-intelligence.com/news/003

    ◆AIRoAと連携しAIロボット基盤モデル開発と大規模データ収集を開始
    松尾豊が理事を務める一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)が設立され、本研究室は数万時間のデータ収集を目標としロボットAIモデルの構築を目指すとともに、研究者・エンジニアとの協働を通じた技術開発体制を強化しています。

    https://weblab.t.u-tokyo.ac.jp/news/2025-07-18/

    ◆松尾教授、「日本成長戦略会議」有識者構成員として参画

    高市政権で新設された「日本成長戦略会議」に、松尾教授が有識者構成員として参画しています。岸田政権、石破政権で実施されていた「新しい資本主義実現会議」に続いての参画となります。

    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/index.html

    各種勉強会

    ◆DLHacks・DL輪読会を毎週実施中

    毎週持ち回りで深層学習の最新論文を読んできて発表する「DL輪読会」と
    Deep Learningに関する最新論文をプログラミングコードに落とし込む修行の場「DLHacks」を毎週定期開催しています。

    松尾研が主催する講義の修了生(且つ社会人を除く現役学生)であれば、どなたでも参加可能。技術力を研鑽したい方は、修了生向けSlackでの定期募集からご応募ください。


    以上、2025年の松尾研の主なニュースをご紹介しました!
    どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
    新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。