講義概要

所属研究員が最新研究に基づく講義を展開
次世代の情報社会を担うAI人材を育成する

東京大学松尾・岩澤研究室では、最新のAI(人工知能)・データサイエンスに関心のある幅広い層に向けた公開講座を開講しています。2025年度の受講者は70,057名にのぼりました。東大生はもとより、全国の学生(大学院生、大学生、短大生、専門学校生、高専生、高校生、中学生)が受講可能です。地方の大学生・高専生が約4割を占め、高校生・中学生の受講も増えています。テーマはAI・データサイエンスの基礎知識からディープラーニング(深層学習)、アントレプレナーシップ教育と幅広いテーマを網羅しています。メタバース工学部法人会員の社員受講者、ライフイベント(介護・育児等)による休職者など、一般社会人の方が受講できる講座も用意しています。 特徴は、松尾・岩澤研究室に所属する若手研究員や在籍学生、講座修了生が教材を開発し、講師やTA(Teaching Assistant)を担当していること。日進月歩のAI技術に関する基礎研究の成果を講義にダイレクトに反映しています。講座はオンライン中心ですが、対面形式のワークショップも一部導入しています。全体としては、実際に手を動かして、最新のプログラミング技術を習得していく体験型の講義になるよう心がけています。 講義の目的は、基礎研究の成果を価値のある学び・質の高い教育として多くの人に提供し、人・組織ひいては社会の変化につなげること。先進的なAI・データサイエンス教育によって、若手研究者・エンジニア・起業家を育成し、世界で戦える技術大国のエコシステムをつくることをミッションとしています。

社会的意義

アカデミアと産業界が連携して価値を生み出す時代へ

経済産業省の推計によると、2040年にはAI・ロボット等の利活用を担う人材が約340万人不足する可能性が指摘されています(経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」2026年3月)。現在の世界経済を牽引しているのは、間違いなくITやAIに代表されるテクノロジーの進歩です。私たちが住む日本は、この情報分野を担う次世代の人材が不足しているという大きな課題を抱えています。 この状況を打開するためには、アカデミアと産業界が連携し価値を生み出す世界を日本国内で実現する必要があります。モデルとなるのは、情報分野をリードするアメリカです。西海岸のシリコンバレーでは、2000年代からアカデミアと産業界が密に連携した教育・研究が展開されています。Googleの社員がスタンフォード大学で最新の技術に関する講義をするような環境が約20年前から当たり前に存在していたのです。 アカデミアから産業界に優れた人材が輩出され、彼らが企業を活性化させる。そして、情報分野における国際競争力が高まることで、質の高い学術研究が継続できる——。世界のIT・AI研究の現場を見渡せば、このサイクルが必然であることは間違いありません。今こそ、アカデミアと産業界が連携して新たな価値を創造できる人材を育成するときなのです。

講座の特徴

大学と企業が密に連携して次世代を育てる
「イノベーションのエコシステム」を実現する

こうした危機的状況を打開するために、東京大学松尾・岩澤研究室が目指すのは、大学と企業が密に連携して次世代を育てる「イノベーションのエコシステム」の実現です。これは、基礎研究の成果を先進的な講義によって多くの学生や社会人に伝え、共有した知識・技術を社会実装することで、日本の経済発展につなげるモデルを指します。大学の研究内容が、スタートアップ企業創出やサービス開発という形で世の中に広がり、その経済活動の中で得られたリソースが大学に環流され、研究・開発が一層盛んになる——。そんなサイクルを目指しています。 このエコシステムの中で、重要な役割を果たすのが「教育活動」です。研究や教育の第一線で活躍するAIの研究者が講師を務め、日々更新される世界中の論文から最新の学びを提供する講座は、日本国内でも類を見ません。また、LLM(大規模言語モデル)や世界モデル、Physical AIといった最新の知見を提供するだけでなく、技術を社会実装する具体的な起業ノウハウも提供しています。松尾・岩澤研究室の講座では、プログラミングの技術を習得するだけでなく、社会課題に手が届く確かな手応えを実感することができます。

2014年にスタートした松尾・岩澤研究室の外部向け講座は、2026年7月時点で延べ150,000名以上の学生・社会人が受講しました。今後も講座数を拡大し、2026年度は年間200,000名が受講するプログラムへの発展を目指しています。 松尾・岩澤研究室の講座を受講後、起業した先輩、ビッグテック企業に就職した先輩も多数輩出しています。松尾・岩澤研究室発のスタートアップは累計42社にのぼります。こうした大規模な講義を実現するための研究者ネットワーク、充実した教育体制、研究を社会実装につなげた実績は、松尾・岩澤研究室ならではの財産だと考えています。

具体的な活動内容

実際に手を動かしながら最先端の知識・技術を習得
世界中から国内最高峰のAI研究コミュニティに参加できる

松尾・岩澤研究室の講座は、基本的に無料で受講できます(一部有償講座あり)。オンライン講義が中心なので、全国どこからでも参加可能。2025年からは海外展開も始まり、世界各国から受講できる講座もあります。大学生・大学院生だけでなく、中学生・高校生・高専生・専門学校生・短大生でも参加できます。 講座の大きな特徴は、プログラミング、アプリのプロトタイピング、フィールドリサーチなどを実際に体験しながら学べること。多くの講座で、受講者同士が作成した機械学習やディープラーニングのモデル精度を競い合うコンペティションも開催します。社会課題を発見し、それをAIの先端技術によって解決する方法を考え、スマホアプリやWebサービスなど社会実装を意図したビジネスプランを作成する経験もできます。

1.プログラミング中心
機械学習やディープラーニングを用いたAI研究分野において、理論的な説明を聞くだけで内容を理解することは困難です。実際にコーディングをして、モデルを訓練し、パラメータを調整するといった経験をすることで、初めて重要な概念や技術が身につきます。
2.コンペティション
機械学習やディープラーニングの分野は、実際のデータを扱い、モデルを訓練させることで、重要な概念や技術を深く理解できます。多くの授業では、受講者同士が作成したモデルの精度を競い合うKaggle形式の実践的なコンペティションを取り入れています。さらに、松尾研LLMコンペやPhysical AI開発コンペティション、GENIAC PRIZEなど、大規模な開発コンペティションも開催しています。
3.コミュニティ型教育
松尾・岩澤研究室では、新しい教育のアプローチとして、「コミュニティ型教育」を提案しています。多くの授業で受講者コミュニティの形成、グループワークを通じた相互メンタリングを行い、最新の技術トピックを共有するように心がけています。毎週の講義にライブで参加でき、出席できない場合も2週間以内にオンデマンド視聴すれば出席扱いとなります。講義外の時間には講師・TAがオフィスアワーを設けて質問に対応し、専用のオンラインコミュニティでは受講生同士が交流できます。講師やTAは、その講座の修了生が務めています。

深層学習、LLMからAI起業まで幅広いテーマの講座群

松尾・岩澤研究室では、AI・データサイエンスの基礎知識、ディープラーニング、大規模言語モデル(LLM)、深層生成モデル、世界モデル、AI経営など、さまざまテーマで講座を開講しています。受講対象や受講目的、目指す将来像、自分の興味・関心、技術レベルに合った講座から参加することができます。

講座一覧

AI経営講座
AI・デジタル技術を駆使して、社会課題を解決する具体的な方法を学べる講座群。AI・デジタルの力を経営の世界で発揮し、グローバル市場で活躍できる人材を育成します。
Deep Learning基礎講座
ニューラルネットワークの仕組みから始まり、深層学習に関する最新トピックを網羅的に学べる初心者向け講座。深層学習を用いた画像処理やデータ解析にも挑戦できます。
Deep Learning応用講座
大規模言語モデル(LLM)、深層強化学習、深層生成モデル、世界モデルなど最新の研究成果をより深く学び、自らの研究やビジネスに応用するための発展的な講座群。
Web工学講座
Webプロダクト開発の基礎的な知識とそれを取りまくビジネスモデルについて学ぶ講座群。実際にプロダクト開発にも挑戦できる演習もあります。
知能ロボティクス講座
AIをロボット制御に応用する実践型プロジェクト演習。物体検出、画像認識、複数センサを用いた情報処理など、実際にロボットを動かす技術を習得。
機械学習講座
機械学習を金融取引などに応用する際に必要な幅広いトピックを学術・実務両方の観点から学べる講座。データセット作成やラベリングに挑戦できる演習もあります。
アントレプレナーシップ講座
起業を見据えた講義&フィールドワーク複合の実践的起業家育成講座群。連携企業や著名起業家による講義のほか、Webアプリ開発に取り組む演習などもあります。
AXエバンジェリスト講座
AIを企業等で活用し、業務や組織を変革するAIトランスフォーメーション(AX)に必要な知識や経験を学べる講座。

海外展開

日本発のAI教育を世界へ
グローバルサウスを中心に114ヵ国へ広がる

2025年より、松尾・岩澤研究室はGCIの海外展開を開始しました。第1期(2025年9〜12月・全14回)には32ヵ国460校から7,700名が参加。第1回はベトナムのハノイ工科大学で現地開催し、350名以上が参加して立ち見の学生も出るほどの盛況となりました。最終回はジンバブエのハラレ工科大学で開催しています。第2期(2026年4〜7月)はグローバルサウスを中心に114ヵ国から25,604名が参加し、第1期の3倍以上に拡大しました。 成績上位で修了した学生には、松尾研究室訪問やAI論文の輪読会を含む5日間の日本スタディツアーへの招待を実施しています。参加学生には共同研究への参画やTA就任など、継続的に関わる機会も提供しています。 頭脳流出が深刻な新興国においても、講義・共同研究・インキュベーションを一体で展開することで、AI教育を受けた人材が自国で起業し、国内企業から案件を受託して成長する——。そうしたローカルな経済圏の発展に貢献することを目指しています。

海外展開の詳細はこちら(リンク)

運営

確かな技術と経験を持つ講師陣と運営チームが
最先端の講義を実現

松尾・岩澤研究室の強みは、AIおよびWeb工学の先端研究に携わる研究者・技術者の層の厚さです。配属学生・共同研究に参加する学生・研究員・教員・スタッフあわせて総勢450名超が在籍し、2025年度はトップ国際会議・国際論文誌に34本が採録されました。深層生成モデルや大規模言語モデルの研究を手がける若手研究員や在籍学生が自ら教材を開発し、講師を担当します。各講座の募集や運営も研究室専属の職員が担当。企業と連携した寄付講座も積極的に開講しています。 松尾・岩澤研究室の外部向け講座からすでに延べ150,000名以上の学生たちが社会に羽ばたき、起業を実現した事例も増えています。最先端のAI・データサイエンス教育を提供し、習得した知識・技術の社会実装まで伴走する——。確かな技術と経験を持つ講師陣と運営チームが強い使命感を持って、世界で戦える技術大国のエコシステムをつくるというミッションに挑んでいます。

關 悠里子

Seki Yuriko

中務 のぞみ

Nakatsukasa Nozomi

川﨑 竜一

Kawasaki Ryuichi

岸 真衣

Kishi Mai

木下 泰佑

Kinoshita Taisuke

河本 聖己

Kawamoto Masaki

薮崎 ひかる

Yabuzaki Hikaru

矢野 純

Yano Jun

巖淵 京

Iwabuchi Takashi

小川 純子

Ogawa Junko

山田 悠生

Yuki Yamada

河合 真里

Kawai Mari

津島 緑

Tsushima Midori

大江 奈保子

Oe Naoko

和田 千佳

Wada Chika

越智 桃子

Ochi Momoko

手塚 裕美

Tetsuka Hiromi

和田 真衣

Wada Mai

隅田 早代

Sumida Sayo

鈴木 美和子

Suzuki Miwako

市岡 瑞葵

Mizuki Ichioka

メンバー募集のご案内

松尾・岩澤研究室の教育活動にご協力いただけるメンバーを募集しています。以下の応募フォームよりご連絡ください。詳細をお伝えします。

寄付講座のご案内

寄付講座とは、東京大学松尾・岩澤研究室における基礎研究の成果を社会に広く発信することを目的とした教育活動のひとつで、企業様からの寄付によって成り立っています。次世代のAI・データサイエンス人材を育成し、日本経済の発展につなげるという松尾・岩澤研究室のビジョンに共感・ご支援いただける企業様を随時募集しています。